就業規則(私傷病休職規定)の整備による対応策
ここ最近の事例として、体の不調を訴えて長期間お休みする従業員が増えています。原因としては様々なことが考えられますが、中でも目立ってきているのが「うつ病」をはじめとする心の病や3大成人病と呼ばれる「がん・急性心筋梗塞・脳卒中」です。
これらの私傷病は長期間の療養が必要であり、一旦治ったとしても再発するケースも多く見受けられます。 急な業務の引継ぎや療養期間中の代替要員の確保など、会社として何をどこまでしなければならないのかを事前に議論し、対処方法を検討しておく必要があります。有効な事前準備として、就業規則内の「休職規定」を整備しておくことが考えられます。
休職とは?
休職とは、当該社員に執務させることが不可能であるか、もしくは適当でないような事由(業務外の私傷病による長期欠勤など)が生じた場合に、社員の地位は現在のまま保有させながら執務のみを禁止する処分をいいます。
公務員の場合、法律で休職に関する定めがありますが、民間労働者の場合、特に法律上の定めがないので使用者が任意に定めることになります。通常、この場合には就業規則上に「休職規定」を設けて定めます。
モデル休職規定例
休職
第○条 従業員が、次の場合に該当するときは休職とする。
- 業務外の傷病により引き続き欠勤し、1ヶ月を経過しても就労できないとき(欠勤1ヶ月経過日の翌日より2ヶ月間)
- 社員の都合により、1ヶ月を超えて就業できないとき(欠勤1ヶ月経過日の翌日より2ヶ月間)
- 刑事事件に関し起訴され、相当の期間就業できないと認められたとき(未決期間)
- 前各号のほか、特別の事情があり休職させることが適当と認められるとき(会社が必要と認めた期間)
休職期間の取扱い
第○条 休職期間については賃金を支給せず、また勤続年数にも通算しない。ただし、出向を除く休職事由が会社都合による場合は、平均賃金の60%を支給するとともに、勤続年数も通算する。
復職
第○条 休職期間満了前に休職事由が消滅した場合は、原則として休職前の職務に復帰させる。ただし、事情により、休職前の職務と異なる職務に復帰させることがある。また、社員は正当な理由なくこれを拒むことはできない。
休職者が復職する場合は、事前に会社へ届出なければならない。
私傷病による休職者が復職する場合は、会社が指定する医師の診断に基づき会社が決定する。
休職規定について
例えば、御社の休職規定について次の部分はよく検討されているでしょうか?
- 休職期間はあまり長すぎず明確に記載されているか。ただし、あまりにも短期間(例えば、1ヶ月未満)の場合など、労働基準法の規定する解雇予告制度、その他の解雇に関する規定を免れることが目的ではないかと疑われかねないので注意が必要です。
- 休職期間満了時に復職できない場合は「自然退職」とするのか、「解雇扱い」とするのかを明確にしているか。
- 復職時の職務は、休職前と同じものを用意できるでしょうか。休職期間中に代替要員の配置などが行われていれば、必ずしも元のポストが空いているとは限りません。
- 復職時の判定方法は明確でしょうか。例えば、従業員が自身の知り合いの医者から得た証明書を持参した場合など、その信ぴょう性を判断するすべがなく対応が難しくなります。職務に耐えられる水準まで回復したかの判断は難しいところですが、会社としての判断基準を明確に示すべきです。
- 休職希望者の病状や、回復可能性をどのように情報収集し、判断するのかなどの事務的な扱いも検討しておく必要があるでしょう。