会社を設立すると、営業活動以外に、人事や経理といったバックオフィス業務も回していかなければなりません。
創業当初は、売上を上げるのにできるだけ専念したい時期です。
- それなのに次々とやらなければならないことが・・・
- そもそも、何をしなければいけないのかが分からない
そういった声をよく耳にします。
そこで、忙しい創業時の経営者の方向けに、創業当初に必要となる人事関連の業務をできるだけ簡単に、そして分かりやすくまとめてみました。
創業時に必要な4つの公的保険手続き
会社を設立した時に、手続きが必要になる公的保険は次の4つです。
保険の種類 | 何のための保険なのか(一例) |
---|---|
健康保険 | 医療費の負担補助 |
厚生年金保険 | 将来の年金積立 |
雇用保険 | 失業保険(給付)、育児休業給付 |
労災保険 | 業務上、通勤途上の事故や怪我に対する給付 |
一般的に、健康保険と厚生年金保険をあわせて「社会保険」、雇用保険と労災保険をあわせて「労働保険」と呼ばれています。
それぞれに加入が義務付けられている基準(加入基準)がありますので、簡単に押さえておきましょう。
社会保険と労働保険の加入基準
例外はありますが、一般的な社会保険と労働保険の基準について説明いたします。
健康保険、厚生年金保険
次の1、2の両方の条件を満たす役員や労働者がいる場合、健康保険、厚生年金保険に加入しなければなりません。
- 週の所定労働時間が、同種の業務に従事する労働者(例えば、フルタイムの方)の4分の3以上
- 月の所定労働日数が、同種の業務に従事する労働者(例えば、フルタイムの方)の4分の3以上
法人ではなく個人事業であれば、上記の基準を満たす方が5人以上いる場合に、加入義務が生じます。
雇用保険
1、2の両方の条件を満たす労働者が1人でもいる場合、雇用保険に加入しなければなりません。
- 週の所定労働時間が20時間以上
- 31日以上働いてもらう見込みがある(30日以内の短期就労ではない)
労災保険
労働者を1人でも雇っている場合、加入義務があります。
短時間のパートタイマーでも1人と数えます。
それぞれの保険の手続き期限と提出場所
保険の種類が4つあり、それぞれに加入が義務となる基準があることをお伝えしましたが、では、それぞれの保険は、どこに対して、いつまでに手続きをすればいいのでしょうか。
次の表を見てください。
保険の種類 | 提出する場所 | 手続き期限 |
---|---|---|
健康保険 | 健康保険組合、協会けんぽ(年金事務所が窓口代理) | 事実発生から5日以内 |
厚生年金保険 | 年金事務所 | 事実発生から5日以内 |
雇用保険 | ハローワーク | 加入義務が発生した日の翌日から10日以内 ※労災保険の手続き完了後に行うもの |
労災保険 | 労働基準監督署 | 加入義務が発生した日の翌日から10日以内 |
結構、忙しいですよね。
年金事務所も、ハローワークもどこで手続きしてもよいというわけではありません。
まず、自分の会社の管轄を調べるところから始まります。
必要な申請書や添付書類は、各提出先の行政のホームページから探すことができ、行政窓口に電話をしたり、直接行けば、丁寧に教えてくれます。
しかし、普段見慣れない申請書を探し出し、正しく書類を作成するにはかなりの時間と労力を要します。
この申請書で合っているのか、記入に誤りがないか、何を聞いたらよいのか分からず問い合わせしづらい、など不安に思うこともあるかと思います。
提出期限までに書類を揃えることは、悩むことも多い大変な作業です。
人を雇う場合は、給与計算と明細の作成が必要に
従業員には、給与を支払う際に給与明細を渡したいものです。
給与は毎月発生しますので、給与明細も毎月渡すことになります。
賞与を支払うことがあれば、賞与明細も必要となります。
賃金が発生した場合、法律的には「賃金台帳」の作成が義務付けられており、「賃金台帳」は助成金の申請時に必要となることも。
賃金が発生した場合、法律的には「賃金台帳」というものを会社で作成して保存しなければなりません。
労働日数や労働時間、支給内容などの記載しなければならない項目も決まっており、労働基準監督署の調査があった場合に、指摘されたりします。
また、助成金を申請する場合など、よく添付資料として求められたりもします。
給与のルールを後から変更するのは大変。最初にしっかり決めることが大切
給与について、基本給や手当をどうやって決めるのか、締め日や支払日をどうするのかなどは、多くの方が悩むところです。
給与のルール決めは、最初が肝心です。後に給与を下げたり、ルールを変更することは結構難しいですし、次に雇う人もその基準を元に考えることになるため、よく考えて決めましょう。
人を雇う際は、労働条件を通知する義務があります。
創業して、さらに人を雇ったら、「雇用契約書」を作りましょう。
人を雇うということは、仕事をしてもらう対価として、給与という高額な支払いを約束することでもあります。
どういう仕事をしてもらって、それに対していくらの給与を支払うのかなど、決まり事を書面におこして、行き違いが生じないように契約することをお勧めしています。
法律的には、一部の労働条件を「書面で」「労働者に通知する」義務があり、この通知する書式を「労働条件通知書」などと呼んでいます。
雇用契約書で、必要な項目を記載し通知すれば、この法律上の義務も果たしたことになりますので、やはり、雇用契約書の作成と取り交わしは、欠かせない業務ではないでしょうか。
創業時に必要な手続きは、社会保険労務士に依頼することができます。
創業当初にこれらの人事関連の業務をこなすのは、複雑で、手間だなと感じる方もいらっしゃると思います。
自社で対応が難しい場合には、社会保険労務士の活用をおすすめします。
社会保険と労働保険の手続きを代行できるのは、唯一、社会保険労務士だけです。
これは法律で決められていて、社会保険労務士以外が、報酬をもらって代行することはできません。
また、給与明細や雇用契約書の作成は、労働関連法令の専門知識が一部必要になります。
こちらも、労働関連法令の専門家である社会保険労務士であれば、正確でしっかりしたものを作成することができます。
弊社でも、創業当初のこれらの業務を代行していますので、ぜひご相談ください。
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