給与計算に必要なルールとは?
給与計算は、労働基準法/健康保険法/厚生年金保険法/雇用保険法…他、多くの労働社会保険関連法令を理解した上で行わなければ、正確な計算を行うことができません。
しかしながら、よく利用される知識と普段あまり利用されない知識とがあるように、給与計算を行う上でも、最低限必要となるいわば「核」となる知識があるものです。これから何回かに分けてこの基礎知識について確認していきます。
第13回の今回は、「割増賃金の端数処理」についてです。
1. 割増賃金計算における端数処理
毎日の時間外労働時間数については、原則として四捨五入や切り捨てはできません。
しかし、割増賃金計算上の端数処理について、次のような事務処理方法は、通達により、いずれも賃金支払の便宜上の取扱いと認められ、法違反としては取り扱われないことになっています。
- 1か月における時間外労働、休日労働および深夜業の各々の時間数の合計に1時間未満の端数がある場合に、30分未満の端数を切り捨て、それ以上を1時間に切り上げること。
- 1時間当たりの賃金額および割増賃金額に円未満の端数が生じた場合、50銭未満の端数を切り捨て、それ以上を1円に切り上げること。
- 1か月における時間外労働、休日労働、深夜業の各々の割増賃金の総額に1円未満の端数が生じた場合、2と同様に処理すること。
つまり、たとえ5分や10分でも実際に労働した時間について、毎日の残業時間の端数を切り捨てることは、労働基準法違反となり認められません。
なお、端数を常に切り上げて計算することは、法で定めた基準を上回る処理ですので、問題はありません。
2. 1ヵ月の賃金支払額における端数処理
以下の方法は、賃金支払の便宜上の取扱と認められていますので、労働基準法第24条違反としては取り扱われません。
ただし、これらの方法をとる場合には、就業規則の定めに基づき行う必要があります。
- 1ヶ月の賃金支払額(賃金の一部を控除して支払う場合には控除した額)に百円未満の端数が生じた場合、50円未満の端数を切捨て、それ以上を百円に切り上げて支払うこと。
- 1ヶ月の賃金支払額に生じた千円未満の端数を翌月の賃金支払日に繰り越して支払うこと。
3. 遅刻、早退、欠勤等の端数処理
遅刻、早退、欠勤等の時間の端数処理について、5分の遅刻を30分の遅刻として賃金カットをするというような処理はできません。
労働の提供の無かった限度を超えるカット(25分についてのカット)については、賃金の全額払いの原則に反し、違法となります。
なお、このような取扱を就業規則に定める減給の制裁として、労働基準法第91条の制限内で行う場合には、全額払いの原則には反しないものである。とされています。