東京都新宿区の社会保険労務士事務所

シャノアス社会保険労務士法人

給与計算のルール18 「通勤手当の課税/非課税区分」

給与計算に必要なルールとは?

給与計算は、労働基準法/健康保険法/厚生年金保険法/雇用保険法…他、多くの労働社会保険関連法令を理解した上で行わなければ、正確な計算を行うことができません。

しかしながら、よく利用される知識と普段あまり利用されない知識とがあるように、給与計算を行う上でも、最低限必要となるいわば「核」となる知識があるものです。これから何回かに分けてこの基礎知識について確認していきます。

第18回の今回は、「通勤手当の課税/非課税区分」についてです。

通勤手当の扱いと、課税/非課税区分について

通勤手当とは、従業員が通勤するのに必要な費用の一部または全部を会社が負担するもので、福利厚生の観点から実に多くの企業で支給されています。
通勤手当は、「所得税」、「社会保険・労働保険」、「労働基準法」でその扱い方が違いますので、給与計算を行う上では十分に注意する必要があります。以下、給与計算を行う上でポイントとなる部分です。

1. 所得税法では非課税限度額が決められています

通勤手当には通勤手段ごとに1ヶ月あたりの「非課税限度額」が所得税法で定められていて、それを上回るか否かで、課税するかどうかが判断されます。

この非課税限度額は、電車やバスなどの交通機関を利用している人などに支給する場合は1ヶ月あたり10万円、自転車、自動車等でいわゆる「マイカー通勤」をしている人に支給する場合は、片道の通勤距離に応じて1ヶ月あたり4,100円から2万4,500円とされています。つまり、これらの金額を超えなければ課税はされないわけです。

マイカー等で通勤している人の1ヶ月の非課税限度額

役員や使用人に通常の給与に加算して支給する通勤手当は、一定の限度額まで非課税となっています。
マイカーなどで通勤している人の非課税となる1か月当たりの限度額は、片道の通勤距離に応じて、次のように定められています。

片道の通勤距離1ヶ月あたりの限度額
2キロメートル未満(全額課税)
2キロメートル以上10キロメートル未満4,100円
10キロメートル以上15キロメートル未満6,500円
15キロメートル以上25キロメートル未満11,300円
25キロメートル以上35キロメートル未満16,100円
35キロメートル以上45キロメートル未満20,900円
45キロメートル以上24,500円

※片道の通勤距離が15キロメートル以上の人が、電車やバスなどを利用して通勤しているとみなしたときの通勤定期券1か月当たりの金額が、それぞれの限度額を超える場合にはその金額が限度額となります。この場合に、利用できる交通機関が無いときは、通勤距離に応じたJRの地方交通線の通勤定期券1か月当たりの金額で判定しても差し支えありません。ただし、100,000円が限度です。

1か月当たりの非課税となる限度額を超えて通勤手当を支給する場合には、超える部分の金額が給与として課税されます。
この超える部分の金額は、通勤手当を支給した月の給与の額に上乗せして所得税の源泉徴収を行います。

電車やバス等の交通期間を利用している場合の非課税限度額

役員や使用人に通常の給与に加算して支給する通勤手当や通勤定期券などは、一定の限度額まで非課税となっています。
電車やバスなどの交通機関だけを利用している人と交通機関のほかにマイカーや自転車なども使っている人の通勤手当などの非課税となる限度額については以下のとおりです。

A:電車やバスだけを利用して通勤している場合

この場合の非課税となる限度額は、通勤手当や通勤定期券などの金額のうち、1か月当たり100,000円までの金額です。
この限度額は、経済的で最も合理的な経路で通勤した場合の通勤定期券などの金額です。
この場合、新幹線や鉄道を利用した運賃等は含まれますが、グリーン料金などは除かれます。

B:電車やバスなどのほかにマイカーや自転車なども使って通勤している場合

この場合の限度額は、次の1と2を合計した金額ですが、1ヶ月当たり100,000円が限度です。

  1. 電車やバスなどの交通機関を利用する場合の1か月間の通勤定期券などの金額
  2. マイカーや自転車等を使って通勤する片道の距離で決まっている1ヶ月当たりの非課税となる限度額

1ヶ月当たりの非課税となる限度額を超えて通勤手当や通勤定期券などを支給する場合には、超える部分の金額が給与として課税されます。
この超える部分の金額は、通勤手当や通勤定期券などを支給した月の給与の額に上乗せして所得税の源泉徴収を行います。
なお、通勤手当などの非課税となる限度額は、パートやアルバイトなど短期間雇い入れる人についても、月を単位にして計算します。

2. 社会保険、労働保険や労働基準法の取扱い

社会保険や労働保険では所得税法とは異なり、しっかりと保険料の計算の基礎に算入されてしまいます。社会保険料(健康保険料、介護保険料および厚生年金保険料)は、月額給与をもとに標準報酬月額を決定し、それに保険料率を乗じて算定しますが、この月額給与には通勤手当も含まれます。労働保険(労災保険・雇用保険)では、保険料は1年間に支払われた賃金総額に保険料率を乗じて算定され、この賃金総額には社会保険と同様に通勤手当も含まれます。

また、労働基準法上でも通勤手当の取扱いが大きく影響を受けます。解雇予告手当、休業手当、減給の制裁などの金額の算定には「平均賃金」が使われますが、この平均賃金の算定の基礎には通勤手当が含まれると規定されています。しかしその一方で、割増賃金の算定に当たっては、その基礎に通勤手当を算入しなくてもよいとされていますから、時間外労働手当、休日労働手当および深夜労働手当には反映されません。

このように、通勤手当は給与計算事務を行う上で、その解釈を正しく行い適切な計算をしていく必要があります。

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