給与計算に必要なルールとは?
給与計算は、労働基準法/健康保険法/厚生年金保険法/雇用保険法…他、多くの労働社会保険関連法令を理解した上で行わなければ、正確な計算を行うことができません。
しかしながら、よく利用される知識と普段あまり利用されない知識とがあるように、給与計算を行う上でも、最低限必要となるいわば「核」となる知識があるものです。これから何回かに分けてこの基礎知識について確認していきます。
第9回の今回は、「割増賃金の計算の基礎から除外できる住宅手当」についてです。
1. 基礎から除外できる「住宅手当の範囲の考え方」
「住宅手当」という名称の手当であれば、すべて除外することができるというわけではありません。これまでも、家族手当や通勤手当については、それぞれ扶養家族数や通勤に要する費用、通勤距離に応じて支給される手当のみが除外することができたわけですが、住宅手当についてもこれと同様です。具体的には、次の通りです。
- 割増賃金の基礎から除外できる住宅手当とは、「住宅に要する費用に応じて算定される手当」をいうものであり、手当の名称の如何を問わず実質によって取り扱うことが必要です。
- 「住宅に要する費用」とは、賃貸住宅については、居住に必要な住宅(これに付随する設備等を含む。以下同じ。)の賃借のために必要な費用、持家については、居住に必要な住宅の購入、管理等のために必要な費用です。
- 「費用に応じた算定」とは、費用に定率を乗じた額とすることや、費用を段階的に区分し費用が増えるにしたがって額を多くすることです。
- 住宅に要する費用以外の費用に応じて算定される手当や、住宅に要する費用に関わらず一律に定額で支給される手当は、除外される住宅手当には当たりません。
2. 基礎から除外できる「住宅手当の具体例」
上述の「住宅手当の範囲の考え方」に関して具体例を示せば、次の通りとなります。
除外できる住宅手当に当たる例
- 住宅に要する費用に定率を乗じた額を支給することとされているもの。例えば、賃貸住宅居住者には家賃の一定割合、持家居住者には口一ン月額の一定割合を支給することとされているもの。
- 住宅に要する費用を段階的に区分し、費用が増えるにしたがって額を多くして支給することとされているもの。例えば、家賃月額5〜10万円の者には2万円、家賃月額10万円を超える者には3万円を支給することとされているようなもの。
除外できる住宅手当に当たらない例
- 住宅の形態ごとに一律に定額で支給することとされているもの。例えば賃貸住宅居住者には2万円、持家居住者には1万円を支給することとされているようなもの。
- 住宅以外の要素に応じて定率又は定額で支給することとされているもの。例えば、扶養家族がある者には2万円、扶養家族がない者には1万円を支給することとされているようなもの。
- 全員に一律に定額で支給することとされているもの。